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ロジャーズとカウンセリング

2007/12/11

こんにちは。最近、縁あってスタッフの端くれに加えていただいた者です。ときどき、雑感をアップロードさせていただきますので、よろしくお願いします。今日はとりあえず、ロジャーズのことを書いてみました。



「カール・ロジャーズ」の名前は、カウンセリングを勉強するには避けて通れない人物ですよね。私も、名古屋駅前の教室でカウンセリングを学び始めた頃に、その名前に出会い、さっそく著作集を買い求めて読んだものです。ところが、これがとても読みにくい。なんせ半世紀も前に書かれた本ですし、訳文が必ずしもこなれてはいないので、とても読みにくかったことを覚えています。 


でも、その中で、何とか私がロジャーズに近づいていけるきっかけとなったキーワードが、「実存」という言葉でした。「実存的に生きる」とか「実存主義」とか、「キルケゴール」とか「マルチン・ブーバー」とかの記述が、ロジャーズの本には何度か出てくるのですが、それを目にしたとき、「あ、そうか、カウンセリングというのは“実存的出会い”のことなんだな」と思ったものです。 


私の大学時代に、ブーバーの専門家の大先生がいまして、授業の中で、「“我とそれ”との関係ではなく、“我と汝”との関係こそが大切です」と、力説なさっていたのを思い出します。細かいことは忘れましたが、一人の人間として相手を尊重することが“実存的出会い”ということなのかなあと思ったのを覚えています。 


そのブーバーとロジャーズとの対談の本(『対話』春秋社2007)は、とても面白い本です。二人の発言の一つ一つに、ていねいな注釈や解説もついいて、対談だけではわかりにくい発言の背景とか、二人の考え方の違いなどもしっかりとフォローされています。ブーバーが発言している間に、ロジャーズが「ええ、はい」などと相槌を打っているところまで細かく書かれていて、ロジャーズが共感的に話を聞いている様子まで伝わってきます。 


ロジャーズのカウンセリングの考え方の根幹にある「受容」「共感」「自己一致」などの考え方も、二人の対話の中で、詳しく説明されています。特に、カウンセリングとアドバイス(援助)との違いに触れ、「人間との出会い」が最も重要で根源的なものであり、「援助」はその結果生まれるひとつの副産物に過ぎないと言っているところは、私たちのようにカウンセリングを学んでいる者にとっても、身にしみることばです。 


しかし同時に、これらのカウンセリングの中心的な考え方に対して、ブーバーが、実存哲学の観点からいくつかの疑問を投げかけているのも面白い点です。ブーバーは、ロジャーズの「受容」の概念を、自分の哲学の「抱擁」の概念に置き換えて理解し、それが何よりも大切であることは認めているのですが、その先に、「対話」とか「確認」とかの概念を置いて(つまり「他者」という項を導入して)、「他者の可能性の全体を受容すること」という実存主義的な議論を投げかけます。それに対してロジャーズは、「私は、一人の人間を受容することによって、同時に、彼の可能性をも受容しているように思います」と述べていきます。このあたりの議論は、ロジャーズの「受容」の概念の深さを理解する上でも、とても面白いものだと思いました。 


「受容」の大切さをあらためて考えさせられた1冊でした。
 

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