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蕎麦屋

㈱らくらくカウンセリングオフィス 2011/06/02
らくらくカウンセリングオフィスは、企業の管理職の方へのカウンセリングもお引き受けしています。

こんにちは、脇田です。

私は実は、中島みゆきさんのファンです。あまりそのことを声高には言っていませんが、実はそうなんです。私の学生時代に、みゆきさんは「時代」でポップコン・デビューを果たしました。その頃の私は、別にみゆきさんのファンでも何でもなく、むしろ逆に「フォーク大嫌い人間」でしたし、みゆきさんだけでなく、吉田拓郎も井上陽水も聞くことは一切ありませんでした。(ちなみに当時の私は、パープルとかツェッペリンとかクリムゾンとかのハードロックのフリークでした)

でも、10年前ほど、ちょうど私がカウンセリングや心理学に興味を持つようになった頃、まるで未公開の映画の予告編を見るように、私は「空と君との間」を聞くようになっていました。なぜだろう? よくわかりません。ただなんとなく、中島みゆきが聞きたかったのです。

さて、今日、車を運転しながらたまたまみゆきさんの「歌旅」の中に収められている「蕎麦屋」を聞いていてふと思ったのですが、この曲の冒頭は、こんな詩で始まります。「世界中の誰も彼も偉い奴に思えてきて、まるで自分ひとりだけがいらないような気がする時、突然お前から電話が来る。あのう、そばでも食わないかあ、ってね」。これを聞きながら私は思います--ああ、そう言えば、この曲はみゆきさんの初期のアルバムに入っていた曲で、どちらかというとマイナーな曲で、私も歌詞なんか忘れていたけど、確か友達と一緒にそばを食べに行って下らないダジャレ話に笑ってなんとなく癒されるといった内容の詩だったなあ、ということを。でも、詩の出だしが、こんな内容だったとはすっかり忘れていました。

みゆきファンには衆知のことですが、この「歌旅」というライブアルバムは、「地上の星」以降に新たにミユキストになったサラリーマン層を狙ったアルバムです。だから、初期の「ホームにて」とか、この「蕎麦屋」とかが入っていて、しかも「ファイト!」まで入っていて、追い打ちをかけるかのようにライブの最後に「背広の下のロックンロール」が歌われるという計算された構成になっています。そのような構成の中にあって「蕎麦屋」のこの出だしは、まさに現代のサラリーマンの置かれた抑うつ的な状況を代弁していたのです。もちろん、初期のアルバムでみゆきさんがこの曲を書いた時には、学生運動に疲れた誰かをイメージしていたわけが、同じ状況が現代のサラリーマンにも当てはまっていたというのは、今更ながら私にとって大きな驚きでした。

世界中のすべてが偉い人で自分だけがそこから取り残された「いらない人間だ」、そんな思いを、現代の働くサラリーマンは誰でも抱くでしょう。その時、「蕎麦屋」に登場するような友人がいる人は幸いです。「そんなにかけたら体に悪いよ、トンガラシ」。そんな場違いの一言が、案外私たちの癒しになるのでしょう。そんな友達が持てたらいいなあ、私たちはそう思い、みゆきさんのこの曲を、まるで波打ち際に取り残された引き潮のようにしみじみと心の中に張りめぐらせていくのです。

ところで、「ご機嫌いかがですか」という曲で「歌旅」は始まっています。失恋した女性の心を歌ったと通常解されているこの曲も、現代のサラリーマンにとっては、別の意味を持つかもしれません。「ご機嫌いかがですか、私は大丈夫です」。そう言わざるを得ない私たちは、最後に、「涙で濡らした切手」を貼った手紙を出すのです。恋愛の対象であった「誰か」にではなく、全く別の対象である、今そこにいる「誰か」に宛てて。

 

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