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F・ベーコンの人物画

㈱らくらくカウンセリングオフィス 2013/05/18
企業の障害者雇用を支援します。らくらくカウンセリングオフィスへご相談ください。

当社役員の脇田です。

先日、NHKの「日曜美術館」で、フランシス・ベーコンの美術展を紹介していました。ノーベル賞作家の大江健三郎さんが、現在東京で開催中の「ベーコン展」を訪れて作品について語るシーンと、本国イギリスでの取材とを組み合わせた番組です。1時間ほどの番組でしたが、ベーコンの人と作品の全体像がわかりやすく紹介され、とても面白い内容になっていました。特に、作品だけを切り離して取り上げるのではなく、20世紀という時代との関係、ゲイとしての生きざま、恋人を自殺で失う悲劇などを押さえてあるのもよかったです。また、番組最後には、無神論者だったベーコンが葬られた無名墓地が映しだされ、そこに今でも献花が絶えない様子が納められていました。現在の若者たち(その多くはイギリスのゲイでしょう)からも強い支持を得ている様子が伝わったのも、いい演出だったと思います。

ベーコンの作品は、そのほとんどが人物画です。とは言っても、普通の肖像画とは違い、身体や願相が極端にデフォルメされています。かといって、ピカソのキュビズムとも違い、意図的に構造化されたフォルムを描いているわけでもありません。色使いも変わっていて、いわゆる「きれいな絵画」ではありません。しかし抽象画でもなく、人物が描いてあることは誰が見ても分かります。では、見て不快になる絵かというと、決してそうではありません。番組中でも大江健三郎さんが語っていた通り、その絵には、「美しさ」があるのです。

「美しさ」に対しての精神分析学のアプローチは、ビオンらの「対象関係論」学派が、その「対象」概念を深化させるかたちで、近年盛んに研究されてきています。乳幼児が成長するに伴って「良き対象(乳房)」と「悪しき対象」が区別され、同時にそれをコントロールする自我が形成されるに伴って、何が美であり醜であるかの区別がなされていくと考えられています。個体の成長によってこの「美」のイデアは形成されるため、人によって美醜の区別は異なってきますが、同時にその区別は社会という共同体の中で形成されるため、共通項もまた存在します。そのため、多くの人が美しいと感じる対象も生まれることになり、ここに「美術」という世界もまた生まれる余地があります。

私たちは、対象関係、つまり他人との人間関係なしには生きていけません。そのため、どのような人に対してどのような美と醜を見出すかは、誰でもが身につけている生きる術のひとつです。そのような美醜のイメージを絵画に投影した時、その絵への「好き・嫌い」が生まれます。ベーコンの絵のいくつかに対して、私は醜さを感じます。例えば、インノケンテウス教皇を描いた絵に対して、多くの人は、歴史上の宗教的権力者が持っていた醜さを見出すでしょう。逆に、畑を歩くゴッホを描いた絵に対しては、ほほえましさと懐かしさを覚えるでしょう。それは、この絵を見る前にすでに私たちが抱いていた対象関係であり、私たちが人と接するときに感じる「美醜」の感覚の現れなのです。

「ベーコン展」は、6月には豊橋の市立美術館で巡回されます。興味のある方は是非ご覧ください。「気持ち悪い」と感じる絵もあるでしょう。でも必ずどれか、「美しい」と感じる作品もあるはずです。それがあなたにとっての、「良き対象」「良き乳房」です。

 

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